昭和の鉄道情景 「活写」 [鉄道本]
活写とは、"物事のありさまを生き生きと描き出すこと"(大辞泉より)だそうだ。
恥ずかしながら、活写の意味を知らなかった。この本は蒸気機関車の最晩年の記録を、写真と文章により活写した本である。
第1作ではC62によるニセコ、第2作では布原D51三重連にフォーカスを当てて、添乗の記録を含め、力強い写真を載せている。
また、後半には当時の国鉄の車庫に佇む車両記録や、廃止前の下津井電鉄を載せるなど、どれも貴重で、羨ましい記録だ。
全体的には荒々しい編集で、本としての全体感は欠けるが、それを個々の写真が補っている。文章も著者の思入れが強く出ているが、
それが、記録としての文章とうまい具合混ざっていて、楽しく読めるのは著者の思うところだろう。
しかしこのシリーズ、この二冊で終わってしまったが、その他のものは、あとがきに述べられている、"作者のものを書いたりするかとを仕事にしてきた小生にしてみれば、「許せない」"ことだったのだろうか?
ちなみに、これ以降著者は、「稀車珍車・好き―趣味的にみた車輌」を始め、2008年ごろまでに、次々とマニアックな本を出している。
ちょうどその頃、大宮の鉄道博物館が開館したりと、鉄道ブーム再来の時期であった。
そうした時期に、かつてのブームの体験者の記録を出版する所に、時代を感じられ意義がありそうだ。
そう、鉄道趣味に復帰した世代に、懐かしい、羨ましいと心に響くものがあると思う。そして、今からでも頑張ろうという気にさせてくれそうだ。この本からは、そんな力を得られる気がしてならない。
昭和の鉄道情景「活写」―1971年小樽築港 (〓文庫 (047))
- 作者: いのうえ こーいち
- 出版社/メーカー: エイ出版社
- 発売日: 2004/01/01
- メディア: 文庫