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鉄道地図の謎から歴史を読む方法 野村正樹著 KAWADE夢新書 [鉄道本]

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この本のタイトルは鉄道地図だが、本の内容は、特に地形的な地図に言及しているわけではない。
むしろ、路線図から日本の鉄道の歴史を総覧した内容だ。
その中でも、戦前、戦中、戦後における政治と鉄道の関係について、短文ながら緻密に鉄道の歴史が
語られる。そうした意味で、歴史をまとめ読みするに適した一冊だ。


以前、小ブログで取り上げた、”やさしい鉄道法規”や、”井上勝: 職掌は唯クロカネの道作に候”が、歴史の中である分野や人物を深く
掘り下げた内容であるのに対し、この本は、それを横通しで繋ぐ役割があるように思う。

例えば、2002年に、鉄道事業法により鉄道の開廃業が届け出制になったが、鉄道法規から見ると
事業者と担当省の負担軽減であるが、本書では、小泉政権化の規制緩和の流れの中で施行された
ものであり、結果として、”地元の合意がなくても、運輸大臣に「退出届」を出せば良くなった”と
本制度を、廃線を増やした”陰の主役”と皮肉る。


事実、”需給調整規制廃止前後における鉄軌道の廃止状況の変化に関する分析”
によれば、2001年の時点で一気に廃止路線が増えている。
本書の端々で、こうした仮説めいた発言が見られるが、著者は単にファンの立場から感情的に
発言しているのではなく、綿密に裏付けを取った上でのことであることが分かる。


おわりにの章で著者は、「日本の近現代を振り返る際の新しい手掛りとしての鉄道」を知るきっかけ
になって欲しいと記している。大げさではあるが、私の個人としては、本書から鉄道の廃止を嘆く
だけでなく、その地域に鉄道とともに確かに存在した文化を振り返ることも大切だと再認識させられた。それだけで一読の価値があったと思う。



鉄道地図の謎から歴史を読む方法 (KAWADE夢新書)

鉄道地図の謎から歴史を読む方法 (KAWADE夢新書)

  • 作者: 野村 正樹
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2008/09/23
  • メディア: 新書


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