15歳の機関助手 川端新二著 交通新聞社新書 [鉄道本]
今夏の国際模型コンベンションにて、川端新二さんの講演を聴講した。
“シリーズ乗務員が語る蒸機時代4”という演目で、川端新二氏、宇田賢吉氏、大山正氏という構成でそれぞれの経験、思いを語って下さった。
私の川端さんとの出会いは、川端さんの著作、”ある機関士の回想”という本を、図書館にて偶然見つけたことから始まる。
この本は、川端さんの経験を詳しく書いたもので、当時、鉄道に関する書籍を読み始めたばかりの私は、乗務員視点の精緻な文章に感銘を受けた。そこには、写真だけだは分からない、時間軸を持った記録がある。
今回取り上げる本は、川端さんが、”ある機関士の〜”とは異なる視点で書かれたものだ。
それは、戦中という現代からは想像がつきにくい環境での乗務記録だ。
先の講演でも触れていらっしゃったが、米軍機の機関車への掃射、空襲による被害と職員殉職、戦後の石炭の質の悪化など、機関車を動かすだけでも一苦労なのに、さらに困難な状況に直面する。そういった体験が淡々と語られていく。
そんな状況を体験してもなお、氏はなお、”あの激動の時代、蒸気機関車に乗って懸命に働いたことは、誇りであり心の大きな財産”と言う。
それは、あの時代を生き抜いた人にしか言えない事かも知れないが、文字によって追想できることは、私たちにとって幸運なことだと思う。
15歳の機関助士―戦火をくぐり抜けた汽車と少年 (交通新聞社新書)
- 作者: 川端 新二
- 出版社/メーカー: 交通新聞社
- 発売日: 2012/12/01
- メディア: 単行本
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