星晃が手がけた国鉄時代黄金時代の車両たち 福原俊一著 KOTSUライブラリイ [鉄道本]
星晃氏、誰ぞや?と思われる方もいるかもしれないが、氏は、国鉄の副技師長まで登り詰めた車両設計の専門家である。
その業績は数多あるものの、鉄道ファンにとって一番馴染み深いのは、"旅客車"という言葉だろう。本書の冒頭では、"客車・電車・
ディーゼル動車を一括した用語"として、氏が創作した言葉と紹介されている。それが、今や、日本を代表する鉄道会社の名称となっているのだ。
肝心の本書の内容だが、国鉄時代に星氏が携わった車両について氏との対話からの小ストーリーを挟みつつ、史実に基づき紹介するという形で構成されている。
80系から年代順に並べられた車種だが、中距離列車が好きな私は153系辺りの話から盛り上がってくる。
貫通扉は非貫通編成の車掌二名体制を改善するためだったことや、貫通扉を塗り分けないのは、メンテナンス時の作業性を指摘されての事など、ややもすると時代の流れに埋もれてしまいそうな話が取り上げられる。
本書では、こうした星氏の設計マインドを、あくまでも対話の結果からを取り上げられているため著者の興味対象に依存している。また、その内容も、体系化されているわけではなく、エッセイ的に取り上げられているのみである。私は、少しその点に物足りなさを感じてしまった。
という事で、現在、星晃氏著の"回想の旅客車"を手にしたところだ。こちらについても読後に書感を認めたい。
それにしても本書は、星晃入門としては好著であることは変わりない。
星晃が手がけた国鉄黄金時代の車両たち (KOTSUライブラリ)
- 作者: 福原 俊一
- 出版社/メーカー: 交通新聞社
- 発売日: 2014/11/01
- メディア: 単行本
ローカル線の雄 DD16 [JITOZU_車両]
参照MAP
写真は、鉄道総合技術研究所のDD16 7号機である。
この形式は、低規格路線の無煙化対応に当たり生産された機体だ。
手持ちの、機関車全百科によると、小海線や飯山線、七尾線などに投入された様だ。
それら路線において、C12,C56と置き換えられていった。
また、貨物輸送がメインのため、SGは非搭載。そして流用部品多数で生産された地味な機体であるが、小型ディーゼル好きには堪らない魅了がある。
全体的には、足回りがスカスカとして不恰好な印象も否めないが、個人的には、セミキャブレターの極端に切り詰められた短い側、つまり上記写真の側から見た構図はバランスの良い美しさを醸し出していると感じる。
残念ながら、私は、鉄道総研の本機を拝見したことは無い。本機は現在、若桜鉄道
に移管され活躍してある様だ。しかも、体験運転ができるという。
若桜鉄道の前身は、国鉄、若桜線である。
低規格路線では無いものの、そのローカル線具合はDD16がよく似合いそうだ。
いつの日か、山陰の鉄道を巡りつつ訪問して見たい。
素晴らしき記念館 日中線記念館 [鉄道紀行]
その際、熱塩駅の日中線記念館を取り上げたが、この夏に短時間ながら、ようやく行くことができた。
(以前の記事は、こちら)
行って見てまず驚いたのが、予想に反して訪問者が多かった事だ。車でしか行くことができないにもかかわらず、15:30ごろの訪問で
4組ほどの見学者がいた。やはり宮崎駿作品を思わせる洋風の駅舎は、何かしらの心の原風景を刺激する様で一見の価値あるということなのだろうか?
また、駅の雰囲気も素晴らしいのだが、展示物も、よく手入れをされており地元の方の愛情を感じる。
そして、展示物のハイライトは、ラッセル車キ100形とオハフ60系客車である。
両車と内部に入ることができる。特にキは、サイドの雪よけ用の大きな板を動かす機構を、内部からじっくり観察することができるといった貴重な体験が可能だ。また、各所、痛みがあるものの比較的綺麗な状態を保っている。
廃止後、廃墟と化してしまい、当時の事も知る由もなくなってしまう路線が多い中、こうした残す取り組みに大いに賛同したい。そして、地元の悲願だった鉄道敷設、廃止後も大切にされていることに誇りさえ感じてしまうり
今後、この取り組みが、次の世代にも引き継がれて行く事を切に願うばかりである。
五百羅漢とマンションと駅と [JITOZU_施設]
参照MAP
写真は、伊豆箱根鉄道大雄山線の五百羅漢駅だ。
ちょっと低めの屋根、駅看板、車両、そして背後に小田急の築堤と色々な要素がコンパクトに収まっていて、想像を掻き立てる楽しい写真と思う。
この五百羅漢駅、私も訪れたことがあるが、なかなか面白い駅だった。
まず、五百羅漢だ。羅漢様は駅から徒歩5分弱の玉宝寺に安置されている。
本堂は、扉が閉められていて入りづらい。私は、庭木を手入れしている地元の方に断って入った。開いていれば自由には入れそうであるが、入りづらいことこの上ない。
(五百羅漢の様子 著者撮影)
本堂に入ると、それを取り囲むようにして配置されている。羅漢様は、制作年代によるものかテイストが様々であり、見ていて飽きない。また、本堂の薄暗い光と調和して、背景が闇になるため、空間の広がりを感じた。
そして、お次は駅舎である。
(五百羅漢駅舎 著者撮影)
この駅は、マンションと一体化している。
そのため駅へのアプローチは、まるでマンションのエントランスの様だ。
そして駅改札口は、さしずめ管理人室のような構えである。
何だか、"マンション住まいの友達の家に遊びに来た"感覚に陥るのだ。
そしてホームに上がると今度は、どこぞの田舎の駅ような風合いなのだ。五百羅漢から駅へ向かいホームに上がる。
今回、取り上げた写真の様にホームからの眺めだけでなく、周囲の環境もコンパクトな体験の中で、様々な記憶が呼び起こされる。そんな駅が五百羅漢駅だ。