父・宮脇俊三への旅 宮脇灯子著 角川文庫 [鉄道本]
この本は、鉄道の旅を中心にした紀行作家、宮脇俊三氏のご令嬢、灯子氏が、宮脇氏の逝去の三年後に書かれたものだ。内容は、氏にまつわる話を集めたエッセイ集である。
本書の中で、私が一番興味があったことは、
鉄道紀行文を文学にまで高めたその流麗なる文章は、どのように生まれてきたのかという点だ。
当本によれば、それは、深夜酒とともに生み出された様である。全ての作品がそうなのかは分からないが、”書斎でちびちびやりなが書いていた”とのこと。
しかし、六十を超えたあたりから、”筆力がおち、酒の力を借りて書くようになった”そして、齢とともにアルコールへの依存が進み、1999年、72歳ごろに 休筆宣言をしている。
例え、才能があろうとも文章を書くということの大変さが分かるエピソードだ。
その他に本書では人間味のある、ちょっと拘り屋のお父さんとしての氏の姿が描かれている。
例えば、子供達から贈られた人形を鞄に入れて旅していたことや、野球好きが奏して、強かった池田高校の校歌を、録音し父娘で暗記したことなど、作品からは窺い知れない、ユーモラスな一面も多く取り上げられている。
何かそこに、氏の文章に時々顔を出す、とぼけた人間味や、几帳面さを感じてしまうのだ。
この様な種類の本は、好き嫌いあるとは思うが、氏の作品の新たな味わい方の添えにいかがだろう。
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